大判例

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広島高等裁判所 昭和25年(う)239号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(理由)

記録並びに原裁判所が取り調べた証拠に依り諸般の事実を調査するに被告人が原判示の如く森本誠から依頼を受けた賍品である中古自転車一台を其の賍品である情を知りながら売却の斡旋をした事実は原判決挙示の証拠に依り明らかであつて被告人所論の様な事実誤認を疑わしめる様な事由は認められない。併し弁護人所論のごとく被告人がこれを斡旋した事情は森本が同人の妻が梅毒性脊髄カリエスの為入院中で其の費用等に困窮して居る事情を聞き之に同情した結果であることを認めることが出来其の動機に於て斟量すべきものがあり、又斡旋した自転車の数も一台で其の回数も一回に過ぎず、本件犯行に因り被告人が何等の利得をも得た形跡がないこと、被告人には昭和二二年九月一六日山口簡易裁判所で傷害罪に因り罰金二百円に処せられたことがある外他に前科のないこと等が認められるので、これら等の諸点を総合考量すれば原審が被告人に対し、本件に付懲役十月及び罰金千円の実刑に処したのは所論の様に過重の刑であると認めざるを得ない。原審が本件に付被告人に対し斯様な量刑をしたのは、本件記録上他に右の様な量刑が相当であると認めしめる様な事由も見出し得ないので、所論の如く被告人が昭和二三年二月山口地方裁判所で私文書偽造行使詐欺罪に因り懲役二年の判決を受け、現に広島高等裁判所に控訴中の者であることに因るのではないかと推認せられる併し按ずるに右事件は未だ控訴審に繋属中であつて、たとい第一審裁判所に於ては有罪の判決があり一応無罪の推定は破れたにもせよ、未だ有罪であることが最終的に確定して居る訳ではなく従て将来或は無罪となる可能性が絶無であるともいうことは出来ない訳である。もつとも未だ有罪無罪が最終的に確定して居ないにせよ、いやしくも第一審裁判所で有罪として実刑の判決を受け控訴中であるにも拘らず、再び本件犯罪を敢行したということは被告人に対する本件の量刑に当り、不利益な犯情として斟酌せられることを免れることは出来ないが、夫は単に諸々の利益不利益の犯情を考量するに付ての一資料であるに過ぎず、被告人に対する本件に対する本件被告事件に付刑を量定するに当つては公訴を提起せられた被疑事実の中裁判所が証拠に因り有罪と認定した事実に付き右の様な犯情をも含めて諸々の情状を考量した上適正と認める刑を量定すべきもので本件被告事件以外に控訴中の別事件であることを以て他に酌量すべき諸々の情状があるのを無視し、之を特に被告人に厳刑を科すべき犯情であると重視して刑を量定するのは現行刑訴法の精神に適合しないものと解する。或は仮に本件被告事件に付刑の執行を猶予するのを相当と認めて執行猶予を言渡したり等しても、控訴中の別事件に付禁錮以上の刑に処せられたときは本件の執行猶予の言渡は取消されるのであるから、本件に付執行猶予を言渡す実効は無いと論ずる者もあるかも知れぬが、本件に付言渡した執行猶予が取消されるのは、別事件に付て刑の言渡を受けた後の結果であるから、其の結果を予想して、本件に付執行を猶予するを相当と認めながらも、予め執行猶予の言渡をしないで置くが如きは、本末を顚倒したものといわざるを得ない。

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